第26章 隣にいるだけで ー王宮アランー
「なぁ、さっき外で言いかけたこと、なに?」
「え?ああ……。」
ミルクはキスで塞がれた言葉の続きを思いだす。
「なんだったかな、忘れちゃった。」
自分があの時言いかけたことと、アランのキスと両方同時に思い出して恥ずかしくなったミルクはそう誤魔化した。
「ふうん……。じゃああの時俺が考えてたこと教えてやろうか?」
「え?」
「幸せだな……って思ってた。」
優しく目を細めるアランに、ミルクの胸はキュっと締め付けられた。
「嘘。」
「はぁ?嘘じゃねーよ。」
「ちがう、ごめん、忘れちゃったっていうの、嘘。私があの時言いかけてたこと、アランの考えてたことと一緒だよ。」
「……なんだよそれ。」
「ただ隣にいるだけで、側にいられるだけで幸せだなぁって言おうと思ってたの。」
「……。」
「あれ?アラン、照れてる?」
自分から話を振ったはずのアランの顔が心なしか赤くなっているのに気づく。
「うるせぇな……!
それより、嘘ついた罰わかってんだろうな?」
今度はアランがミルクを組み敷いてキスの雨を降らせていく。
(こんな甘い罰ならいつでも……。)
ミルクはそう思いながら笑ってアランを見上げる。
「ほんと、変なやつ……。」
愛おしげに呟くアランの言葉が、部屋に溶けていった。
2017.05.19up