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【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第2章 その一言が忘れられない



 アイツにだけは負けたくない。
 だから、俺はアイツよりもたくさん、何倍も練習するんだ。
 練習すればそれだけ、強くなれるから。

 

 

 夜のランニングを始めた。
 朝のランニングはテニス部入部と同時に始めている。
 けど、中々体力がついてこない。
 きっとまだ量が足りないんだろう。
 そう思って俺は、夜にもランニングをすることにした。
 ランニングをしたあと、いつもしているストレッチと筋トレをするために、俺は公園に向かった。
 夜の公園に足を向けるのは、初めてだ。
 ランニングを始めたのは今日で、いつもは家の中でやっているからだ。

 

 しんと静まり返った公園の中。
 そこには、先客がいた。

(ちっ…)

 人がいてもあまり気にはならないが、相手からすれば多少気になるだろう。
 一体何をしているんだろう…。
 俺はそう思って先客を見てみた。

「…不二、先輩…」

 初めてみる、不二先輩の素振りの姿。
 美しく整ったフォームが、俺の目に焼きつく。
 練習なんて必要ないんじゃないか、と一瞬思ったが、俺はすぐにそれを取り消した。
 3年の先輩が言っていた言葉が、脳裏によぎる。

『いいよな…天才は。それほど練習しなくてもいいんだから』

 その言葉に、釈然としないものを感じていたのは。
 こういうことだったのか。

 

 あの日も。
 あの入学式の日も、先輩は人知れず練習していた。
 俺は、不二先輩が天才と呼ばれるわけが…少しだけ、わかった気がした。
 先輩の邪魔はしたくない。
 俺は踵を返して、その場を後にしようとした。
 しかし、タイミングが悪いというか、運が悪いというか。
 俺は足元に落ちていた小枝を踏んでしまった。
 パキッと、枝の割れる音。
 先輩にまで…届いてしまっただろうか。

 

「……海堂?」

「!」
 

 どうして…名前を覚えているんだろう?
 俺は、数多くいる一年の中の一人なのに。
 不二先輩は少し驚いた顔をして、だけどすぐにいつもの笑顔になって、クスリと笑う。

「キミと桃城は、もう有名だよ?」

(……ちっ…あの腐れ野郎のせいで…)

 よっぽど俺が嫌そうな顔をしていたのか、不二先輩はまた笑った。

(……ちくしょう…)


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