第12章 黄昏に映える人。
「ドキドキしてる」
「…っス」
「僕も、ドキドキしてるの…わかる?」
こくり、と頷くのが体でわかった。
僕の気持ちを伝えるよ。
「海堂。僕は…君が」
ああ。好きって伝えるのって、こんなに勇気がいるんだ。
今まで、僕に好きだって言ってくれた子たちは…。
こんな気持ちだったのかな。
口の中が渇いて。
相手がきっと僕のことを好きだろうって、わかっていても。
その一歩を踏み出すのが、とても怖い。
「君が…好きだよ」
顔を見て言うことはさすがにできなくて。
僕は海堂の肩に顔を埋めたままだった。
女の子って、すごいんだね。
「俺、は……」
海堂の戸惑う声が、頬を伝って響いてくる。
「そういうの…よく…わからなくて…」
「うん…」
「すんません…」
「ううん、いいんだ」
そっと体を起こして、海堂を見つめてみる。
「僕のこと、嫌じゃない?」
僕の言葉に海堂はこくりと頷く。
僕はそのまま幾つか質問をすることにした。
「僕のこと、気になる?」
こくり。
「こうやってくっつくの…嫌じゃないんだよね?」
こくり。
「僕は海堂にぎゅっとされると…すごく、ドキドキする」
こくり。
「それから…すごく、嬉しい」
「え…」
驚いたような表情が可愛い。
こんなにすぐ傍で見られるなんて。
「ねぇ」
自分でもわかる。
僕の声が、甘えたようなトーンになっているってこと。
「海堂がわかるまで…待っててもいい?」
「え……」
「何度でも、確かめてくれていいから」
ぱちぱちと瞬きをしてから、海堂はしっかりと頷いてくれた。
ちゃんと考えてくれてるんだって思うと、頬が緩んで仕方ない。
「ずっと悩んでたのは…俺のこと、スか」
「うん…ごめんね…?」
「……心配、したっス」
前はあんなに話しかけてきたのに、最近は全然だったし。
なのに、すごく視線感じるし。
笑い方、変だし。
プレイもブレてるし。
恋とか…そういうので悩むなんて…って思ってた。
海堂はぽつりぽつり、そう話してくれた。
そんなに気にしてくれてたんだ。
うん…嬉しい。