• テキストサイズ

【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第1章 いつもある風景が少し変わるとき


 テニス部に入部した理由に、その人が多少なりとも関わっていたことは否めない。
 それでも、前からテニスがやりたかったのである。
 入部初日、先輩たちの前で自己紹介をしたとき、海堂はにこにこと微笑んでいる彼を見つけた。

『不二周助』というらしい。

 海堂はその日一日、何とはなしに彼を目で追っていた。
 とはいえ、部の決まりごとなどの説明も多々あって、そちらばかりに気を取られていたわけではないが。
 それから数日、海堂は色んな先輩を目にしてきた。
 二年にしてすでにレギュラーである、頼りになる大石、天才と呼ばれる不二、不敗伝説を持つ手塚、データを駆使する乾に、アクロバティックプレイの菊丸。
 大石や乾が主だった一年の指導をしていたが、時折手塚のアドバイスが入ったりして、一年たちは先輩の名前を覚え始めていた。

 今日のルール説明で初めて、試合形式を見ることになる海堂は、不二の練習姿をあまり見ないことが気になっていた。
 手塚はよく別メニューをしていたり三年に交じっていたりするのに、天才と呼ばれるほどに実力があるのだろうに、不二はそれほど練習に熱心ではないように感じられた。
 手塚に比べれば、練習量はずいぶん少ない気がするのである。

 
 
 

 不二と金本の試合が始まった。
 テニスのルールは、大石の説明とルールブックで大体覚えている。
 一年たちは皆、試合に見入っていた。
 そんな折、通りがかったヒラ部員の三年生が、ぽつりと漏らした言葉が耳に入った。

 

『いいよな…天才は。それほど練習しなくてもいいんだから』

 

 海堂はチラリとそちらを見たが、すでに三年生は背を向けて歩き出していた。
 何だか釈然としないまま、海堂は再びコート上に視線を移したのであった。

 
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp