第9章 変わる人。
ここ最近、不二先輩がやたらと綺麗に見えるのはなぜだろうか。
不二先輩のゲームを見ていて、よく思う。
前から綺麗な人ではあったけれど。
こんなにも綺麗に見えていただろうか。
男に綺麗だなんて言葉、変な話だがそれ以外にどう言えばいいか分からない。
「不二…最近変わったねー」
菊丸先輩の何気ない一言は、一同の視線を不二先輩へと向けさせた。
「確かに…雰囲気は変わったよな」
大石副部長は少し心配そうにしていた。
「…心配ないんじゃないか? 不二は…ちょっと、世界を見る目が変わっただけだよ」
「ふぇ? なにソレー! 乾、さては何か知ってるなー?! 教えろ~!」
「…秘密だ」
乾先輩の意味深な発言に菊丸先輩が騒いでいる。
気になるのは俺もだが、菊丸先輩のように騒ぐ気には、到底なれない。
あのデータマニアの先輩が心配ないと言ってるんだから、気にすることはないのだろう。
「好きな人でも、できたのかにゃー」
「ええっ? マジすか、英二先輩!」
「桃は、どー思う??」
やっぱさ、恋をすると変わるって言うじゃん?と菊丸先輩は楽しそうだ。
「そっスねぇ…。まぁ、もとから綺麗でしたけど…なんか、仕草がこう…見惚れるような感じになってるんスよね」
「そーなの!もう、俺のクラス凄いよー!授業中とかさ、女子がずーーーっと不二見てんの!」
「当の本人は気づいてないんスかね?」
「さぁ…どーなんだろ?」
……バカバカしい。どうでもいいだろ、ンなこと。
俺は二人の会話から逃れるように、その場を離れた。