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【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第8章 心に嘘はつけない。


 
 やっぱり、そうだったんだ、と結論に辿り着いた。
 僕のこの、意味の分からない苛立ちや、葛藤の理由が。
 そう…これは。 
 決して、決して許されない感情じゃないか。


 恋だ……。
 

 どうすればいい?
 僕は、恋をしてしまった。
 海堂に。
 海堂のことが、好きなんだ……。
 
 


 

 僕が体調を崩して、海堂が家まで僕を送ってくれたあの日。
 あんな顔を、見さえしなければ良かったのに。


『不二先輩…歩けますか?』
『うん、大丈夫』

 ゆっくり、ゆっくり僕たちは歩いていた。
 海堂は僕の分の荷物まで持ってくれて、重たそうだった。
 ごめんね、って言ったら怒られたから、僕はもう何も言わなかった。
 無口で不器用な優しさが、海堂らしくて、ちょっと笑えた。
 二人の間に、会話らしい会話はなかったような気がする。
 僕が覚えていないだけかもしれないけれど。
 段々僕の家が近づいてきて。
 さすがに、体は限界らしくて…僕は早くベッドに辿り着きたくて仕方がなかった。

『周助! 朝は普段通りだったのに…』

 母さんは海堂と一緒に帰ってきた僕を見てビックリしていた。
 玄関で、靴を脱いで、立とう、そう思ったんだけれど。

『……あ、あれ?』

 体が、動かない。
 もうすっかり力が抜けてしまって、僕は立ち上がることができなかった。

『先輩…全然大丈夫じゃねぇだろ…』
『…ごめん…』
『謝んなくていいっス』

 結局。僕は海堂に抱えられて、ベッドまで連れていかれることになった。

『ちょっと休憩すれば立てるのに…』

 さすがに、後輩に抱きかかえられてベッドに寝かされるのは、恥ずかしい。
 僕はちょっとむくれ気味にそう言うと、海堂はふしゅー…と溜息をついた。

『玄関であのまま、寝る気スか』
『…そういうわけじゃないけど』
『じゃあ大人しくしててください』

 海堂はそう言って、少し乱暴に僕を持ち上げた。
 ……僕、そんなに軽くないはずなんだけどな…。
 ちょっと、男としてショックだよ…。
 年下にお姫様だっこされるなんて。
 海堂は母さんに案内されて、僕の部屋へと僕を運んでいく。

『本当にごめんなさいね。助かるわ』
『いえ…』

 ベッドの上に横たえられて、僕は息をついた。


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