第6章 あと少し。
『最近、よく海堂と話してるよにゃ~』
唐突な英二の言葉に、僕は文字通りきょとん、とした。
『そうかな?』
別に、海堂だけと話してるつもりはないんだけど…。
きっと、海堂と話す人が他にいないから、単に目立つだけなんだと思うなぁ。
『そうだよ! 不二、海堂のこと気に入ってるだろ?』
『…うーん…』
苦笑する僕に、英二はにこっと笑った。
『ま、海堂ってば反応可愛いし? つつき甲斐あるっていうかさ~』
確かに、それは同意できる。
あとは。
…裕太に、似てるんだ、多分。
不器用なところとか、照れ屋なところが。
そういう風に言われてから、僕は海堂のことを前よりも見るようになった。
桃城と、ほんの些細なことでケンカしたり。
乾といるときは、比較的穏やかだったり。
英二や僕に話しかけられると、少し戸惑いながらも答えてくれる。
大石と手塚に話しかけられると凄く恐縮って感じで面白い。
タカさんとは…あんまり喋ってるとこ見たことないけど。
本当…裕太に似てるなぁ…って思う。
良い子、だよね。
「海堂」
「…何スか」
「最近いいことあった?」
僕の言葉に、海堂はすぐにわかるほど狼狽する。
その姿に笑みを漏らすと、バツが悪くなったみたいで海堂は俯いてしまう。
「機嫌、すごく良いみたいだから」
「…えと、あの…」
「彼女でもできたかな?」
「なっ! そんなんじゃねぇ!」
「じゃあ何?」
ふふ、と笑ったら「しまった」っていう顔をして唇を噛む。
「あの…」
言いよどむその姿が可愛くて、僕はもう少しイジメてみたくなる。
ポケットからある写真を出して、海堂に見せる。
「これ、なーんだ」
その写真は、密かに僕が撮ったもの。
「よく撮れてるでしょ?」
「なんで、これ…?!」
猫を抱いて、とても嬉しそうにその頭を撫でている姿を、レンズ越しに見てたから。
思わずシャッターを切ってしまった。
人はあんまり撮らない主義なんだけど…。