第9章 ずっと想ってた【チョロ松】
チョロ「電車、来たね。君は先に帰って」
これはチョロ松さんなりの気遣い、優しさだ。
『………はい。ちゃんと………ちゃんと、返事しますから………もう少し、待ってください』
チョロ「優しいね、君は。返事なんてしてくれないと思ってた」
そう言って、どこか悲しそうに微笑んだ。
今のわたしに、慰めの言葉なんかいう資格ない。
彼の期待通りの返事なんて、出来ないから。
チョロ「ねえ、ちょっとこっちに来て」
『え?はい』
チョロ「君もなかなか、無防備だね」
『え───……』
チョロ松さんの腕がわたしの背中に回る。
そして、何か温かいものがわたしの額に触れた。
チョロ「顔真っ赤。かわいい。そんなんだと、あいつらが何しでかすやら」
『ちょ、チョロ松さん……!?』
チョロ「ああ、今の?」
チョロ松さんが悪戯っ子みたいな笑みを浮かべる。
チョロ「今はおでこで我慢するよ。お楽しみはとっておかないと、ね?」
そしてわたしは人混みに流されるまま、電車に乗り込んだ。