第5章 平行する想い
午後からの練習、四宮さんは一切莉緒ちゃんに干渉してこなくなった。話し掛ける素振りもせず、近付こうとさえしなかった。
そうして合同練習も終わり、そのまま大学を出た。大学を出て、駅についた頃には、莉緒ちゃんも少し安心した様子だった。このまま帰ってしまったら、莉緒ちゃんと四宮さんは会うことはないんじゃないだろうか。同じ県に住んでるとはいっても、電車に乗らないと会いにいけない。たまたまどこかで会うことは会っても、莉緒ちゃんから四宮さんに話し掛ける事は無いだろうし、さっきの様子からして、四宮さんが莉緒ちゃんに声を掛ける事もないだろう。鳩宮さんと言葉と四宮さんのあの表情が頭から離れなかった。
「ねえ、マッキー、まっつん。」
「ん?」
「二人がかりなら岩ちゃんの事とめられるよね。」
「は?」
「岩ちゃんの事お願い。」
そう言って、岩ちゃんと莉緒ちゃんの元へ足を向けた。
「なんだよ及川?」
「岩ちゃん、莉緒ちゃん借りるね。」
莉緒ちゃんの手を握り、自分の方へと引き寄せた。そして、電車を降りて走った。
「及川、おま!何してんだよ!花巻、松川どけ!」
岩ちゃんの怒声が聞こえた。そして電車のドアが締まった。振り返ると、怒る岩ちゃんを抑えるマッキーとまっつんの姿。そして、ゆっくりと進み始める電車。ドアは締まってるのに岩ちゃんの怒声が聞こえる。
「及川…?」
不安そうな表情でみつめる莉緒ちゃん。
「莉緒ちゃん、ごめん。」
そう言って俺は莉緒ちゃんの手を引いて走り出した。