第23章 【番外編】親愛なる四人へ(松川一静)
「それじゃあ、そろそろ行こっか。」
「どこに…?」
「色々しんどいと思うけど、俺を信じて何も聞かずについてきてくれない?」
涙を流す莉緒ちゃんを説得し、莉緒ちゃんの手を引いてカフェを出て、学校へと向かった。
「…松川、ごめんね。迷惑かけて。」
「迷惑なんて思ってないよ。」
さて、及川は岩泉と上手く話をつけられたかな?
『まっつん、頼みたいことがあるんだけど。三月一日、まっつんと矢巾の誕生日、岩ちゃんと二人で話す時間を作って欲しいんだ。後、莉緒ちゃんを上手いこと家から連れ出して、体育館に連れて来て欲しいんだ。』
これで全てが丸く収まるのかどうか俺には分からなかったけど、いつも俺らを信じていてくれた主将。そして、それを俺らも信じてバレーをしてきた。だから、多分きっと大丈夫。また五人で前みたいに笑える日が来る筈。
「俺じゃダメなんだ!莉緒ちゃんの傍に必要なのは、岩ちゃんなんだよ!自分の気持ちに素直になってよ!」
「…っ!嗚呼、好きだよ!俺は莉緒が好きだ!けど、莉緒は────っ!」
体育館に入ると、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。どうやらタイミングはバッチリだったらしい。
「だってよ、莉緒ちゃん。」
突然の出来事と岩泉からの告白に驚いた莉緒ちゃんは体育館を抜け出した。
「岩ちゃん追っかけて!」
嗚呼、本当に及川は馬鹿だよ。けど、そんな及川だからこそ、俺達は及川を信じて三年間やってきたんだよ。
「…ねえ、まっつん。俺、もう、泣いてもいい?」
「頑張ったな。」
岩泉に殴られボロボロになった及川は泣いた。
四人のように誰かの為に必死になったり、自分の気持ちを押さえ込んでまで、相手の幸せを願ったり、俺には到底縁の無さそうな話だと思ったけど、そんな風に一人の人を好きになれる皆が羨ましくもあった。いつか俺にもそんな風に思える相手が出来るのだろうか。