第23章 【番外編】親愛なる四人へ(松川一静)
「莉緒ちゃん、今日は時間作ってくれてありがと。」
「ううん。折角の誕生日なのに、本当に私なんかが一緒で良かったの?」
三月一日、十八歳の誕生日を迎えた俺は、莉緒ちゃんとデートに来ていた。五人で出掛ける事はよくあったけど、莉緒ちゃんと出掛けるのはこれが初めての事だった。そして、多分これが最初で最後。
俺の事を気遣って笑顔を浮かべてはいるが、それが逆に痛々しくて、見てるこっちまで苦しくなった。
莉緒ちゃんが転校してきてまだ数ヶ月。なのに、いつの間にか、俺達四人に溶け込んで、気が付けば、大事なチームメイトであり友人になっていた。そりゃあ俺も男だし、莉緒ちゃんの事は可愛いって思ったけど、及川や岩泉、花巻のような特別な感情が莉緒ちゃんに向く事は無かった。まあ、好みの問題もあるかな。俺、可愛い系より綺麗系が好きだし、年上が好みだし。これで俺まで莉緒ちゃんにそう言った感情を抱いてたりなんかしたら、ホント俺らの仲めちゃくちゃだっただろうなと思う。
「及川と喧嘩したんだって?」
「…及川から聞いたの?」
「うん、まあ、大体ね。」
飲んでいたカフェモカをテーブルに置くと、ぐっと下唇を噛み締めた莉緒ちゃん。
「及川ってさ、顔はいいけど、面倒くさい奴だよね。」
及川の見てくれに騙されて、過去に思ってたのと違った、なんて言われ振られる及川を幾度と無く見てきた。