第21章 【番外編】恋に落ちる(国見英)
初めて見た時は、可愛い人だな、それくらいの印象しか抱かなかった。可愛いと騒ぎ立てる同級生、先輩たち。そうですねと適当に相槌をうつだけで、特に興味もなかった。最初、先輩が岩泉さんに聞いたのと同じく、俺も岩泉さんの彼女なのかと思った。岩泉さんが女子といるなんて珍しいし、親しそうだったから。実際は違ったらしく、それに喜ぶ部員。喜んだ所で、どうにかなるとも思えないけど。
翌日、岩泉さんと共に部活にやってきた彼女はどうやらマネージャーになったらしい。雑務をしてくれるマネージャーが出来た事は嬉しかった。その分サボれるし。
「ねえ、国見甘いの好き?」
「…まあ、はい。」
休憩中、ぼんやりとしながらコートを眺めていると、突然問い掛けられた質問。この人、部活中は関係ない話しないんじゃなかったっけ?真面目というか、バレー馬鹿という言葉がピッタリな彼女。どうして女子バレー部に入らず男子バレー部のマネージャーになったかは知らないけど。相当バレーが好きならしく、ボールに触る時はいつも嬉しそうな顔をしてる。
「今度の月曜日、駅前に出来たスイーツバイキング行こうよ!」
まさかのお誘い。ていうかなんで俺?会話を聞いてたであろう先輩達からの視線が痛い。
「岩泉さんと行ったらどうですか?」
「だって一君、甘いの好きじゃないし、どうせ行くなら甘いの好きな人と行った方が楽しくない?」
「それなら花巻さんがいいんじゃないですか?」
「花巻、用事があるって。」
「じゃあその次の週に花巻さんと行ってください。」
「来週じゃダメなの!今度の月曜日までだから、限定の塩キャラメルロール。写真で見たんだけど、すっごく美味しそうでさ、絶対食べたくて。」
「行きます。」
「ほんと?じゃあ月曜日、授業終わったら教室に迎えに行くね。」
「嗚呼、俺が三年の教室行きます。」
この人が一年の教室の周りウロウロしてた目立つだろうし。相手が三年といえど、絡もうとする奴はいるだろうし。
「じゃあ、月曜日教室で待ってるね。」
そう言って彼女は岩泉さんの所へ。
…つい、塩キャラメルにつられてしまった。まあ、それ食べに行くだけだし。