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【HQ】Egoist

第14章 恋心の行方


 ガタンという物音が聞こえ、その方向を見ると、そこには岩ちゃんがいた。その表情は驚きというよりも、傷付いた表情というのがしっくりきた。


「…嗚呼、悪い。邪魔したな。…俺、先に帰ってるわ。」


 そう言って岩ちゃんは荷物を持って教室を出て行った。そして左頬に走る痛み。零れ落ちてしまいそうな程の涙が浮かべた莉緒ちゃんに打たれたのだと、理解した。


「やっぱり一君に女の子が近付くのが嫌なのね…!応援するふりして、ずっと、笑ってたんでしょう?信じてたのに…最低っ!」


 莉緒ちゃんは鞄を手に取り、そのまま走って教室を出て行った。教室に一人取り残された俺は、目の前にあった椅子に腰を落とした。


「…何やってんだよ。」


 彼女が幸せなら。俺が自分の気持ちを諦めることで大好きな彼女の笑顔を守れるなら。そう思った筈なのに。たった一つの過ちが今まで築き上げた全てを壊した。目にいっぱいの涙を溜めながらも、それを流さなかったのは、俺という存在の拒絶。莉緒ちゃんに取って俺は涙を見せる程心許せる相手じゃなくなったって事。
 莉緒ちゃんはきっと岩ちゃんを追い掛けて、弁解するよな…。自分が好きなのは俺じゃなくて岩ちゃんだと。無理矢理俺にキスされたと。そう言って涙を流す莉緒ちゃんを岩ちゃんは抱き締めるのかな?そう思うと、胸が苦しくて堪らなかった。


「…ごめん、莉緒ちゃん、好きなんだ。」


 俺の頬を涙が伝った。


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