第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
次の日、目を覚まし、鏡を見ると、目は赤く腫れ上がり酷い顔だった。悔しい思いをしたのは私なんかよりも皆な筈なのに。こんなになるまで泣いてみっともない。
あの後、及川の胸で散々泣いて、及川に手を引かれバスに乗った。バスに乗る頃には泣き終わっていたけど、多分私が泣いていた事は皆気付いていたと思う。学校に帰りミーティングを済ませ、ラーメンを及川の奢りで食べに行くって事になってたけど、どうもそんな気分になれなくて、賢太郎と一緒に帰った。賢太郎はそのままサークルに出ると言っていたけど、私はこんな気持ちのままボールに触るのが怖くてサークルには出なかった。家に帰り付けば、堪えていた涙はまた零れ、自宅に籠ってまた泣いた。お母さんに心配はかけたくなかったけど、どうしても涙が止まらなかった。そして、泣き付かれてそのまま寝てしまった。
時刻は六時。烏野と白鳥沢の試合は十一時から。決勝を見に行きたい気持ちはあったけど、流石に昨日の今日で青城の誰かを誘うのはどうかと思った。一人で決勝を見に行こうかとも思ったけど、それがバレた時、一君に何を言われるか分からない。多分…いや、絶対怒られる。どうしたものかと考えながら携帯に手を伸ばすと、未読メッセージあり。
────美鈴さんからだった。
『春高代表決定戦お疲れ様。決勝見に行きたいんじゃない?今日サークルオフだから、私で良ければ一緒に行くから、観に行くつもりなら連絡ちょうだい。』
『岩泉達と一緒に行くならそれでいいから。間違っても一人で行こうとは思わないでよ。』
私は返信を打ち込み、送信ボタンを押した。
『おはようございます。すみません、良かったら一緒に行ってもらえると嬉しいです。』
美鈴さんのその優しさが嬉しくてまた涙が出た。連絡もしてないのに、私が決勝を観たいと思ってる事に気付いてくれた事。昨日自分達が負けたチームの試合を観に行きたいと思ってる事を一君達に言い出せない事に気付いてくれた事。そして、何よりまた、美鈴さんと昔みたいに連絡を取れることが嬉しかった。