第9章 彼女と最後の青城祭
それから、狂犬ちゃんはまあ、練習に来るようにはなったけど、部員とのらコミュニケーションを全く取ろうとしない。話し掛けても返事がなかったりなんてしょっちゅうで、岩ちゃんと莉緒ちゃんに声を掛けられたらちゃんと返事をするのに。まあ、それはいいとしても、一番問題なのは、
「ねえ、莉緒ちゃんはなんでそんなに狂犬ちゃんに構いっきりなの!部活も毎日莉緒ちゃんが狂犬ちゃん迎えに行ってるって聞いたんだけど!」
「だって、迎えに行かないと部活来ないし。」
「狂犬ちゃんだけ甘やかさないでください。ちゃんと俺のことも甘やかしてください。贔屓良くない!」
「同級生に甘えようとすんな!」
肩を思いっきり叩かれた。莉緒ちゃん、可愛い顔して意外と力が強いから地味に痛い。
なんで莉緒ちゃんはあんなにも狂犬ちゃんに構うのか。実に面白くない。帰りは今まで大抵岩ちゃんと俺が莉緒ちゃんを送って行ってたのに、部活が終わるとそそくさと狂犬ちゃんが莉緒ちゃんを連れて帰る。
「どうせ家に迎えに行かねーといけないんだから、こっちの方が楽だべや!」
うん、確かに。確かにそうなんだけど、なんか腑に落ちない。岩ちゃんにあれでいいのかと聞けば、別にいいんじゃねーの、と素っ気ない感じ。今まで莉緒ちゃんを独占してた訳だし、そこはちょっと寂しいとかそういうの感じないのかな、岩ちゃんは。恋愛感情とかなくても、やっぱりずっと一緒にいた友達が突然違う人と一緒にいるようになったら、少しくらい嫉妬するもんだと思うんだけどな。まあ、岩ちゃんがそんなに繊細かと言われたら、繊細というか図太いって言葉がピッタリだけど。