第7章 今日は彼女の誕生日 ♥︎ 〜黒尾鉄朗〜
無事に仕事が終わった私は、急ぎ足で駅へと急いだ。
クロが好きそうな、少しセクシーめの服、高めのヒール。
今日のために、昨日の夜からたくさん悩んで決めた服。
…と、言いながらも、忙しすぎて新しい服を探しに行く暇なんてなかったから、いつかのデートでも着てた服…。
クロ、今日の私を見て、可愛いって…言ってくれると良いな…。
待ち合わせのカフェに着くと、そこにはもうクロの姿があった。
『ご、ごめん…!遅くなっちゃった』
「あぁ、気にすんな。俺もさっき着いたとこだし」
さらっとそんなことを言いながら、クロがニヤリと笑う。
しかし、机の上のアイスコーヒーの氷はだいぶ溶けていて、彼が少なくとも今着いたところではないことを物語っていた。
『…へへ、ありがとうね』
「どうしたんだよ、急に」
ちょっとびっくりした顔をしながらも、私の頬を優しく撫でるクロの手。
その手の感触が気持ちよくて、思わず身を委ねてから、ここが人目のあるカフェだという事に気付いて、慌てて距離をとる。
「そういうところは相変わらずだな」
『恥ずかしいものは恥ずかしいんです』
へいへい、と言いながらクロがメニューを差し出してくれる。
『あ…ありがとう』
そのまま2人で食事を済ませてから、クロの家へと向かった。
もう何度も来ている彼の部屋。
散らかった洋服や重ねられたマンガでさえ、変に愛おしく思えるものだから、私はきっと病気か何かなんだと思う。
「先、風呂入るか?」
『ん〜、入ってくる〜』
「一緒に?」
『……馬鹿』
そんなやりとりをしてから、脱衣所へ向かう。
このお風呂も何度使わせてもらったんだろう。
クロとは、付き合って2年と少しが経つ。