第1章 ヘタレ王子 〜月島蛍〜
ぼーっと、心の寝顔を見つめる。
…キスしてやろうか。
そんな考えが浮かんでは消えていく。
出来るはずもない、そんなこと。
……僕は、好きなんだけど、心のこと。
心の中でなら、何度だって言える。
『んっ…』
心が寝返りを打って、Tシャツの襟首が胸元まではだける。
僕の方を向いていた顔が、背けられて表情がわからなくなる。
心臓が痛いくらいに脈を打つ。
苦しいくらいに、君が好きなんだよ。
わかってよ…。
「馬鹿」
何度も心の唇を見つめては、逸らす。
寝てる間はノーカウント…?
ちゅ…
…あぁもうほら、結局だめ。
そっと、耳から唇を離す。
今日は、これくらいに…。
…今日は。
もしも今度こんなふうに、僕の前で無防備になられたら、その時。
僕は次こそ君に、心にキスする。
幼馴染みの枠は、そろそろ僕には狭いんだ。
「…おやすみ」
〜fin〜
→あとがき