第3章 ロールキャベツ男子 ♥︎ 〜菅原孝支〜
『菅原先輩!』
放課後の渡り廊下で、俺を呼ぶ声がしたかと思うと腰あたりに、ぽすんと衝撃が走る。
後ろから抱きしめられてる。
見下ろせば、焦げ茶のツインテール。
見上げてくる彼女は、同じ委員会の後輩。
結木 心。
耳の上で跳ねるツインテールがうさぎみたいで、俺としては可愛く思っている。
『菅原先輩!こんにちは!!!』
元気すぎる挨拶に、腰に回された腕。
「結木…、急に抱きつくなって言ったべ?」
困ったように笑ってみせれば、結木はするりと腕を解いた。
心なしか、ツインテールが下向きになった気が…。
本当に耳か?それは?
『だってだって!菅原先輩が悪いんですよ、いい匂いだから…!』
意味不明なことを言いつつ、再度。
今度は後ろからじゃなく真正面から抱きつかれる。
「男にいい匂いとかおかしいだろ…」
理性を保つのがやっとで、ちゃんと笑えたかもわからない。ひょっとしたら変な顔してたかも。
可愛い可愛い、俺の後輩。
俺にだけ懐いてくれたら…なんて、無理だろうけど。
それでも俺は淡い期待を抱いている。
結木が好きだから。
『おかしくないでーす!菅原先輩は、菅原先輩なので!』
「意味わかんないよ…?」
今日も彼女は独特の自論を発揮してくれる。
いや、可愛いからいいんだけどね?
あんまり可愛いと、その。
俺の理性が持たなくなるから、やめて欲しいなー、なんて。
ワガママ。
『菅原先輩は分かんなくていいんですよ〜♪
私だけが知ってるんです!』
あぁもう、そうやって。
結木は簡単に俺の心を揺さぶるんだから。