第18章 Graduation… ♥︎ 〜大将優〜
朝、何度も袖を通した制服を、改めてきっちりと着た。
折って短くしていたスカートも、折らずにそのままの長さで履いた。
今日で終わりなんだと思ったら、涙が溢れた。
大将くん、あなたを好きなことも、今日で終わり。
…終わりにするの。
両親より早く家を出る。
登校時間よりも、早く。
通い慣れた道を、走った。
校門、下駄箱、廊下を抜けて、教室の扉を開ける。
『…なんで、いるの…』
弾む息もそのままに、目の前の人物に問いかける。
「卒業、だから?」
大将くんが、そこにいた。
いつかと同じように携帯ゲームをつまらなさそうにプレイしながら。
『…っ、大将くん』
「ん?」
『式が…、卒業式が終わったら、話があるの』
走ってきたのとは別の理由で、動悸がする。
ばくばくと音を立てる胸が痛い。
ゆっくりと、大将くんが携帯から顔を上げて、私と目を合わせる。
静まり返る教室。
時計が指すのは午前6時45分。
登校時間とされた時間よりも、2時間も早い。
「今聞きたい」
まっすぐ私を見つめる瞳。
その視線に支配されて、私は身動きすらとれずにいた。
『いま…』
「そう、今」
早く、と言わんばかりに、大将くんがこっちへ来いと手招きする。
言うことを聞かなければいけない気がした。