第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
翌日の放課後。
教室を出ると、結木が僕の隣を走り去って行った。
表情は読み取れなかったけれど、ただならぬ気配がして、僕は急いで彼女の後を追った。
幸い、どこに向かうつもりだったのかはすぐに分かった。
あの公園。
『…っ、はぁ…やっぱり、月島くんだよね』
公園につくと、息を切らした結木が僕を振り返らないままに話しかけてきた。
「やっぱりって…何」
その言い回しに酷く違和感を覚えて、素直に苛立ちを言葉の中に含んでしまった。
あ、と思った時には遅くて。
振り向いた彼女は、瞳にたくさん涙を浮かべていた。
「……どう、したの…」
本当にそれしか言葉が出てこなかった。
いつもの饒舌さなんて、役に立たないんだってことが突き刺さる。
『…なんでも、ないよ。ごめん…本当、大丈夫……』
そうは言いながらも、結木の涙は止まることなく頬を流れていく。
ズキズキと胸が痛む。苦しい。
僕の口から気の利いた言葉は出てこなかった。
ただ泣きじゃくる彼女を前に立ち尽くすばかりで、何も出来やしない。
悔しかった。