第7章 部屋とYシャツと私
「違うんです……。嬉しくて……」
ー今まで、お礼を言われたことなんてなかった。何をしてもダメ出しが基本。酷いと鞭を打たれたこともあった。
「……ナル」
目を開けると、ヒートさんとワイヤーさんは優しく微笑んでくれた。
「おれたちはお前に幸せになってほしいんだ」
「だから、何をするにも無理しなくていい」
「……はい」
わたしは頷いた。
「よし! 後は干すだけだな! ナルもやるか?」
「はい!」
わたしは頷きながら返事をした。
「お、いい笑顔だな」
「え……」
わたしはワイヤーさんの言葉に驚いて、自分の顔を触った。
「……今、わたし笑ってました?」
「あァ」
「とびっきり可愛い笑顔でな!」
ヒートさんが歯を見せて笑う。
「……」
顔が熱い。ちゃんと感情が戻って来ていることが嬉しい。
「くー! 今のナルの顔、他のやつらにも見せたかったなー!」
そう言いながら、ヒートさんは洗濯カゴへと手を伸ばした。
「あ! わたしも運びます!」
「大丈夫だ。おれは海賊だぜ? 力には自信があるんだよ」
ヒートさんは軽々とカゴを持ち上げて笑った。
「心配すんな」
「すみま……ありがとうございます」