第1章 あなたに出会う前
涙が頬を流れそうになるのを懸命に堪える。
ーー泣いたら、目の前にいる男になんて言われるかわかったもんじゃない。笑うだろうか? 怒るだろうか?
(こんな地獄から……)
ーー抜けることができるだろうか……いや、きっと誰かが助けてくれる。そう、信じてる。
意識が朦朧とする中、やっとのことでオークションハウスに着いた。
「……」
オークションハウスの前には、先に到着した天竜人の奴隷になっているジャンバールさんもいる。きっと、ジャンバールさんは背が高いからオークションハウスの中に連れて行くと邪魔になると思ったのだろう。
「おい、早く行くえ!」
だが、天竜人が聖マリージョアからはるばる歩いてきたわたしたちを休ませるわけもなく、そのまま彼の前を通ってオークションハウスの中に入った。
+