第5章 自分の名前
2人について行くと、ワニをモチーフにした船が港に止まっていた。
「来い」
「はい……」
わたしは言われるがままに従った。
「頭、おかえりなさい」
「キラーさんもお疲れ様です」
「あァ」
船の中に入ると、少し変わった格好をした男の人たちがたくさんいた。
「その女は?」
「……」
男の人たちの視線が一斉に注がれる。
「……」
ーー怖い。
「船に乗せることにした」
「そうですか」
船員たちは頷いたが、皆動きを止めて赤い髪の男の方を向いた。
「船に乗せることにした!?」
目玉が飛び出る程に見開いた目が男の人とわたしを往復する。
「あァ」
ドカッと椅子に腰掛け、船員たちの方へ向く。
「手は出すな」
「はい」
「……」
わたしはその場に突っ立ったまま、その様子を見ていた。
「おい」
隣から声を掛けられる。わたしが初めに声を掛けた金色の長い髪の毛の男の人だった。
「座らないのか?」
「……え……」
思わず体が固まる。
「で、でも、あなたの分の椅子が……」
「おれはいい。疲れただろ。客を座らせないわけにはいかない」
「……」
ーーたった1つ空いている赤髪の男の人の隣の席。
「……ありがとうございます」