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【WJ】短編

第14章 【切】新しい私の生まれた日/カゲヤマトビオ


 大王に村を焼き払われ、北の国の生き残りの私とトビオ。私達以外は皆魔族に殺された。そしてそこにトオル率いる勇者一行に拾われ、故郷の皆の仇を取るために、トオル達と旅に出た。長い長い旅だった。そして、長い旅の末、辿り着いたダイオウの城。最終決戦で私は大王に心臓を貫かれた。────嗚呼もう私はここで死ぬんだ。そう思ったのに、私は再び目を開けた。目を開けた私を良かったと言って抱き締めてくれるトオル。その後ろにクロとキヨコちゃん。


「ねえ、トビオとハジメはどこ?」


 周りを見回しても二人の姿は見えない。その私の言葉に一瞬悲しそうな表情を浮かべたトオル。そのトオルの頭には牛みたいな角が生えていた。起きたばかりで視界がボヤけてたけど、視界がクリアになった今、トオルがいつも身に付けていた甲冑や剣がない。代わりに黒いマントをつけていた。何それ?そんなの、まるで私達が倒したくてたまらなかった大王みたいじゃない。クロだって、どうしてお目目が真っ赤なの?キヨコちゃんはどうして尻尾が生えてるの?ねえ、ねえ、ねえ。


「戦いは終わったんだよ。」
「トビオとハジメは?ねえ、なんでいないの?まさか死んだの?あの後どうなったの?どうして私は生きてるの?」
「…ハルカちゃん、ハルカちゃんはあの日大王に心臓をくり抜かれて死んだんだよ。」
「でも生きてる。」
「クロもキヨコちゃんも死んだんだ。」
「嘘。だって二人はそこにいるじゃない。」
「うん、ごめんね。」


 なんでトオルが謝るの?なんでそんな悲しそうな顔をするの?


「ハルカ、俺らは死んで生き返ったんだ。」


 謝ってばかりで私の質問に答えてくれなかったトオルの代わりにクロがそう答えた。


「生き返るなんて…そんな魔法は存在しない。」
「そう。人間は使えない。」


 死者を生き返らせる魔法は存在しない。どんな凄腕の黒魔道士や白魔道士がいたとしても、それは叶わない魔法。だけど、ただ一人だけその魔法を使える者がいる。────大王。


「────まさか、」
「そう、オイカワが新しい大王だ。」


 誰か嘘だと言って。どうしてトオルが大王なの?トオルは勇者だよ。


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