第2章 【甘】キミに恋してる/黒尾鉄朗
私は生まれて初めて一目惚れをした。鋭い瞳に思わず吸い込まれそうになる。
「あれ?聞こえてます?」
「ふえ?あ、はい!いいえ!」
私の反応に彼はプッと笑った。あ、笑った顔初めて見た。こんな顔して笑うんだ。綺麗な顔してるのに、笑うとかわいい。
「ドリップのアイス、トールで。」
「あ、はい!」
彼が注文したコーヒーを慌てて準備して、お会計を済ます。彼はコーヒーを受け取ると、カウンター席に腰掛け勉強を始めた。コーヒーを片手に勉強する姿がすごくかっこよくて、バイト中だと言うのも忘れて見惚れてしまうくらい。
私は、名前も歳も、何も知らないお客さんに恋をした。毎日来る訳じゃないみたいだけど、週に2回位はここに来てくれる。身長も高くて大人っぽいし、多分私より年上なんだと思う。いつも勉強してるから、多分学生さんだとは思うんだけど、話しかける勇気なんてそんなもの私にはなくて、話せるのは、私がコーヒーを注文しにレジに来る時か、ドリンクを渡す時だけ。せめて、名前とか、どこの大学かとか、それだけでもいいから知れたらな、なんて思ってはいるけど、進展は0。というか、絶対さっきのおかしい女だと思われたはず…!彼、すごく笑ってたし、恥ずかしい。でも、彼の笑った顔見れたし、いつもより少しだけ沢山話せた。