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【WJ】短編

第3章 【切甘】孤独な王様/影山飛雄


 試合が終わり、私はなんだか夢の中にいるような感覚だった。


「…飛雄、楽しそうだったな、」


 飛雄が前みたいに、バレーをしてた。飛雄のトスに追いつけるミドルブロッカーが烏野にいる。そう思うと、自然と涙が溢れてきて、私はその場にうずくまった。


「…よかった、よかった、」


 飛雄がバレーを嫌いになってなくて。


「何が良かったんですか?」
「え?」


 振り返るとそこには飛雄がいた。私は慌てて涙を拭いて立ち上がった。


「な、なんで飛雄がここに…!」
「金田一が、逢崎さんは多分ここにいるって言ってたから。」
「勇太郎と話したの?」
「…まあ、はい。」


 仲直りしたのかな?


「なんで、泣いてたんですか?」
「そ、そんなことよりどうしたの?なんか用?」
「俺、中学最後の県予選でおろされました。折角見に来てくれてたのに、すみませんでした。約束も守れなかった。」


 そう言って飛雄は頭を下げた。


「…私が見に来てたの気付いてたの?」


 飛雄は頷いた。


「飛雄、ごめんね、ごめんね、」


 我慢していた涙がまた溢れてきた。泣き出す私を見て、飛雄はオロオロしていた。


「飛雄が辛い時、私は飛雄を一人にした…!無責任なこと言って卒業して、私何もできなかった!飛雄がバレーを嫌いになったんじゃないかって、不安で、怖くて、」
「逢崎さんの言葉があったから、頑張れました。」


 飛雄の言葉に次から次に涙が出てきた。


「ばか、ばか!そんなこと言わないで、許せないとか、無責任だとか言っていいんだよ!」


 泣きながら飛雄の胸を叩いた。


「逢崎さん、好きです。」
「へ?」


 突然の告白にビックリし過ぎて涙も止まったし、飛雄を叩いていた手も止まった。



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