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【WJ】短編

第24章 【甘】初恋リスタート/二口堅治


 教えてもらおうと思っていた連絡先。まさか逢崎さんの方から教えてくれるとは思わず、携帯に映し出される文字を見て、頬が緩くなったのが分かった。


「また明るい時間帯に遊びに行こうよ。連絡待ってる。それじゃあ、ごちそうさまでした。後はごゆっくり。」


 そう言われテーブルに置かれた料理に目を移すと、プレートに乗っていた筈の料理は殆ど無くなっていた。唯一プレートに残っていたのは逢崎さんの嫌いなブロッコリーだけ。


「おい二口!俺にも連絡先教えろ!」
「はあー?ンなの無理に決まってるじゃないすか。」
「先輩命令だ!」
「お断りしまーす。」


 絶対口にはしねえけど、鎌先さんの事は尊敬してるし大事な先輩だと思ってる。だからと言って、明らかに逢崎さんに好意を抱いてる鎌先さんに逢崎さんの連絡先を教えるなんて誰がするかよ。


「あ、堅治ー。」


 仕事に戻った筈の逢崎さんが再び俺らのテーブルに戻ってきた。


「これ誕生日だからサービスね。」


 そう言って置かれたケーキ。律儀にちゃんと人数分。


「あと、オマケ。」


 制服のポケットから出されたのは、俺のお気に入りのグミ。そういえば、引退した逢崎さんから中一の時、おめでとうと言って誕生日に渡されたのもこのグミだった。もう三年以上会ってなかったのに、俺の好物を覚えてくれていた事が純粋に嬉しかった。


「堅治おめでとう。」
「どうも。」


 いつも通り、不自然なく答えたつもりだったけど、俺の顔は緩んでいたのか、笹谷さんがニヤニヤしながら俺を見た。


「鎌ち、お前入り込む隙ないから諦めろよな。」
「あーくそ二口コノヤロー!」


 帰ったらなんてメールを送ろうか。頭はその事でいっぱいだった。



             …ℯꫛᎴ


2016/11/10 Happy Birthday


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