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【WJ】短編

第20章 【切甘】重なる鼓動/孤爪研磨


「研磨、ち、違うの!あ、あのね!」


 研磨の表情はあの時よりももっと怖い顔で、その初めて見る表情に驚いて言葉を詰まらせた。


「よう、研磨早かったな。アイス買ってきたぞ。」
「クロ、どういうこと?」
「研磨と喧嘩中って言うから、俺にしとけば?って話してた所。」
「ちが…!そんな話してない!私は研磨のことが…!」
「遥香は俺のだから。クロにはあげない。」


 研磨の口からそんな言葉が出てくるなんて思ってなくて、私は驚いた。だって、研磨好きとか、なんかそういう風なこと言ってくれたこと一回もないし。
 黒尾さんはまたあの悪戯な笑みを浮かべた。


「大事なモンちゃんと分かってんなら、ちゃんと大事にしろよ。じゃあ、俺はアイスも食い終わったし帰るわ。」


 優しい口調でそう言った黒尾さんは研磨の頭を撫でて部屋を出て行った。そして研磨と二人きりになり気まづい雰囲気が流れる。


「遥香。幾ら何でも男と部屋で二人きりなんて無防備過ぎ。」
「黒尾さんに強引に連れられてきただけで、私は帰ろうと…」


 研磨の目が鋭く光った。私は言いかけた言葉をそのまま呑み込んだ。


「クロとキスしたの?」
「してないよ!」


 トンと、体を押され、また反転する視界。さっきと違うのは、目の前に大好きな研磨がいるって事。


「けん、ま?」
「遥香にこういう事していいの俺だけだから。」


 そう言って、研磨は私の唇にキスを落とした。研磨からキスをしてくるなんて初めてで、私は嬉しくて涙が溢れた。


「研磨、ゲームダメにしてごめんなさい。」
「俺の方こそゲームばっかりしてごめん。」
「私、研磨と一緒にいてつまんないとか思ってないから…。」
「うん。分かったから。」
「研磨好き。大好きだよ。」
「…俺も遥香が好き。だから余所見しないで俺だけを見てて。」


 研磨の口からそんな言葉が聞けるなんて思ってもなくて、また涙が出た。嬉しくて、愛しくて、研磨をぎゅうっと抱き締めた。表情はいつも通りだけど、重なった鼓動が私と同じ位早くて、その研磨の鼓動に安心した。


「ねえ、もっかい言って?」
「…もう言わない。」
「なんで!?研磨のケチ!」




               …ℯꫛᎴ


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