第2章 【甘】キミに恋してる/黒尾鉄朗
「あの、先程はありがとうございました。これ、よかったら食べてください。」
15分のブレイク、彼の元へお礼と言ってスコーンを持っていった。
「あ、甘いものはお嫌いですか?」
「いや、大丈夫。」
お礼なんていうのは口実で、ただ、彼と話すきっかけが欲しくて、話し掛けてみたはいいが、言葉が出てこない。
「さっきみたいのよくあるの?」
「え?」
「ナンパ。」
「いや、あれはナンパっていうか、私が小さいからからかわれてただけで、」
そういうと、彼は興味がなさそうに私方をみつめていた。
「ねえ、手貸して。」
「え?」
いいから、と言われ、彼に言われた通り手を出すと、彼は筆箱から取り出した油性ペンで私の手に文字を書き出した。
「え?え?」
「これ、俺のLINE ID。仕事終わったら連絡ちょうだい。」
状況がうまく読み込めない私に、彼は悪戯な笑みを浮かべ、
「仕事中だから、こういうの困りますって言わないの?」
さっきの、聞いてたんだ…!さっきの二人組には言えた言葉が、同じように出せる訳がない。ずっと、話したくて、知りたくてたまらなかったんだから。
「…仕事終わったらLINEします。」
ニヤリと笑うその顔に、私の鼓動はどんどん早くなる。
「俺の方が年下なんだし、敬語いらないよ。」
「え?」
「黒尾鉄朗、音駒高校3年。」
「嘘!?年下?」
「年下は嫌い?」
彼の言葉に私は首を横に振る。それを見て彼はまた笑う。
「連絡待ってるよ、逢崎さん。」
黒尾君はスコーンを食べ終えると、私の頭をぽんぽんとたたき、店を出ていった。
「なんか、色々卑怯だよ…。」
あれで高校生なんてズル過ぎる。そんなことを思いながら、私は仕事に戻った。仕事が終わったら、なんてLINE送ればいいんだろう。
…ℯꫛᎴ