第15章 【甘】弱虫の一歩/西谷夕
弱気で、引っ込み思案な性格を直したくて、まずは形から。そう思ってしたイメチェンは、思いの外しっくりとくるものだった。水泳部で焼けた肌が、明るい髪色、濃いメイクを自然なものへと感じさせた。高校で始めて出来た友人である冴子ちゃん。彼女は見た目通り、ヤンキーで、正直ビビった。見た目こそは私も冴子ちゃんと同じだろうけど、中身は至って普通な女の子な私。そんな冴子ちゃんとソリが合うわけないと思ってたのに、冴子ちゃんは面倒見が良く、怖い外見とは裏腹にすごく優しくて、冴子ちゃんと一緒にいると、明るい気持ちになれた。そんな私と冴子ちゃんは、高校を卒業した後も仲良しで、お互いの家を行き来している仲だ。その為、弟である龍君とも仲良しだ。
「そういえばさ、夕もうすぐ誕生日じゃん。」
「そ、そうだね。」
「なんかやんねーの?」
「うん。…だって、会えるか分かんないし。今バレー部忙しいんでしょ?」
「あーもう!そうやって行動する前に諦めるのやめなよ!アンタの悪い癖!」
それは自分でもよく分かってる。思い立ったら即行動派の冴子ちゃん。うじうじ悩んで何も決められない、かつ行動に移せない消極的な私。
「龍!」
突然弟の名前を叫び部屋から出ていった冴子ちゃん。まさかと思い、私は慌てて冴子ちゃんを追いかけた。
「なんだよ姉ちゃん。」
「夕もうすぐ誕生日じゃん。お祝いしてやるから部活終わったらウチに連れてきなよ。」
「マジ?ノヤっさん喜ぶよ!」
「料理は全部遥香が作るから買い食いなんかしないでまっすぐ帰ってきなよ。」
「ちょっと冴子ちゃん!部活で疲れてるのに振り回したら可哀想だよ。」
「あ、遥香さんちーっす!」
「あ、こんばんは。お邪魔してます。」
「遥香さんの料理美味しいからノヤっさん絶対喜ぶッスよ。」
そんなこんなで、夕君の誕生日の前日にお祝いをする事になりました。