第12章 The beginning of the story3
「松本潤、乗れ」
ヘリコプターの爆音で、よく声が聞こえない。
翔子が死んでからの俺は、日本国のあり方を正そうと政治運動に走った。
どうしても一人で死ぬことができなかったからだ。
恨みを抱えたまま、死ぬことができなかった。
同じような境遇の人達が政治活動している団体に入って、その活動に心血を注いだ。
会社は馘首になったけど、なにも気にならなかった。
心配した友人たち、親戚はどんどん切り捨てていった。
迷惑がかかってしまうから。
一人で気が狂いそうな夜を何度も何度も越えて…
そして俺は、政治犯として投獄された。
そこからは話が早かった。
裁判なんか形だけで。
俺はC級の国家政治犯としてC地区に送られることになった。
最後まで生きてやろうと思った。
けど、だめだと思ったらそこで死のう。
ヘリコプターの爆音の中で、そう考えていた。
背中を押されて乱暴にヘリコプター入れられると、すぐに空に舞い上がった。
小さな窓から下を見下ろすと、どこまでもどこまでもビルと建物が続いた平野が見えた。
「ばかだなぁ…」
肩を掴まれて、いきなり殴りつけられた。
「喋るんじゃないっ…」
いきり立って、口角に泡まで付けて…
馬鹿馬鹿しい…
「こんなちっぽけな国で…ちっぽけな命を取り上げて…」
「黙らんかっ…」
また頬を強く殴られた。
「こんな国、滅びたらいい」
翔子…
夕ちゃん…
もうすぐ、もうすぐそっちへ――
「待っててくれよ…」
【The beginning of the story3 END】