第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
試合の熱気が治まらない観客席。
黒子たちとは合流せず、片隅で試合を見ていた桜は呆然としていた。
「真太郎が…負けた…」
全身が冷たく感じ、喉が張り付く。
「嘘…だよね…」
桜はふらりと立ち上がる。
「真太郎のところへ行くつもりか?」
次の試合の偵察のために客席に姿を見せた赤司が声をかける。
思わず身構えた桜は、強い視線を赤司に向けた。
「いいねその眼。だが、僕には逆効果だ」
「あら征ちゃん、その子だーれ?」
「やっべ可愛いー」
赤司の背後から、実渕と葉山が声をかける。
「新しい駒だよ…宝石のね」
そう呟くと、鋭い視線を桜に向ける。
「真太郎のところへ行くのは許可しない」
赤司は近くの椅子に腰掛ける。
「行ってどうするつもりだ?どの言葉をかける気だ」
うつむき拳を握り締める桜。
「かける言葉なんてないよ…」
桜は赤司に向かい、声を振り絞る。
「きっと、私の顔もみたくないと思う…」
「へぇ…やはり君は僕にふさわしい」
赤司は桜の手を引き隣に座らせる。
「ならばここにいろ。決勝相手の偵察だ」
桜は赤司の隣でうつむく。
自らが言い切った言葉とはいえ、緑間が気がかりで仕方なかった。