第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
「言ったはずだ。絶対は僕だと」
赤司はそのまま走りシュートを決める。
「そのシュートには欠点がある。左利きの真太郎に合わせるには左側からしかパスを入れられない」
先を読む赤司の眼を前に、どんなに早く動いたとしても無力化されてしまう。
「想定は超えていたが、想像を超えていたわけではない」
身体能力や才能に頼るだけではない。
恐ろしく緻密にデザインされたプレイ、これがキセキの世代主将、赤司征十郎。
赤司によって、悟らせず、先を見据えて打たれていた布石が効果を見せ始める。
ここまですべて、赤司の手のひらの上だったと絶望すら感じる。
それでもまだ諦めず食い下がる秀徳。
手を緩めない洛山は、ファウルを取りながらのスリーポイントを決める。
無冠の五将に次々とシュートを決められ、開く点差。
「終わりだ、真太郎」
赤司の眼を前に、成す統べのない緑間。
「赤司ー!」
「改めて敬意を表する、真太郎。そして秀徳高校」
赤司のシュートを止めに入る緑間。
「眠れ、歴戦の王よ」
放ったボールはゴールに吸い込まれ、試合終了の合図。
最後まで、誰一人闘志を失わなかった。
だが、勝利には届かない。