第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
それぞれが身を引き、桜は緑間と二人きりになった。
「あの…真太郎…」
桜が遠慮がちに声をかけると、緑間は無言で手首を掴み歩き出した。
「…怒ってるの…?」
空いている控え室に入ると、桜を壁際に追い詰める。
「自覚しているなら、話は早いのだよ」
鋭い視線で桜を見据える緑間。
「試合前で気が立っている…どうなっても知らないのだよ」
そう言うと、桜の顎をくいっと持ち上げる緑間。
鋭い視線のまま近づく緑間に、思わず目を瞑る桜。
しかし、緑間は何もせずに桜から離れ部屋から出て行こうとする。
「真太郎…?」
「試合前に手を出すほど、余裕は無いのだよ。優勝を手にするまで待っていろ」
いつものように不敵に笑うと、部屋を出て行く緑間。
「…びっくりした…」
桜はその場に座り込んだ。
「真太郎の、ばか…」
呟いた桜の顔は、真っ赤になっていた。