第19章 記憶のカケラ
「えっと、黒子君と、黄瀬君も一緒です」
桜の口からその名前を聞くと、緑間は眉間にシワを寄せた。
「…そうか…また、一人でうろついているのかと思ったのだよ」
「また…?」
緑間は無意識に桜の頭を撫でる。
そしてそのまま、そっと頬に触れた。
「お前が記憶を失ってから、ずいぶん経ったのだよ…」
「…緑間…君…?」
辺りの雑音にかき消されそうな、か細い緑間の声。
寂しげにも見える緑間の顔を、桜はじっと見上げていた。
「…早くあいつらの所に戻るのだよ……お前が笑顔でいられるなら、それで…」
「え…?!」
緑間はそう呟くと、桜に背を向け立ち去ってしまった。
あっという間に人波に紛れた緑間の消えた先を、桜はいつまでも見つめていた。