第5章 歪みに飲まれる愛

「…一旦休憩しましょうか？
コーヒー如何です？」

「はい、ありがとう御座います
スイマセン……少し電話掛けて来ます」

「はい、どうぞ」

先方に頭を下げて
席を立ち
携帯を確認すると

【研磨】
【研磨】
【研磨】
　 ︙

マナーモードで気付けなかった
鬼電の履歴に
更に溜息が出る

まずはコッチだろうな…

〈クロ、折り返し遅い…〉

コールが響く時間も
名乗る暇も与えず
不機嫌な声が響き

〈いま打ち合わせ中？
終わったら俺の所来てくれない？
チョット思い付いた事があるから
クロのチームに投げたいんだ
落ち着いたら電話ヨロ
じゃあね〉

要件だけ言って
切れた通話

…電話の意味とは！？
てゆっか俺、発声ゼロなんだけど？！

打ち合わせで時間押してる事を
気遣っての事だと思いたいけど
行き場を失った声達が
フラストレーションを訴える
相変わらず過ぎる研磨に
ワナワナ携帯を握り締め
会社を出る前に約束をしてた
オイカーくんに電話を掛けた