第4章 消せない昔、消えない今（後）

『えっと…研磨くんが…
気晴らしにって連れて来てくれたの』

「あぁ、なるほどな
…って！！研磨どこいった！？
姫凪がナンパされたら
どうすんだァ！？」

『されないから、心配しないで』

「いや！される！
男スゲェ居るし
姫凪、可愛いし！」

相変わらず私に対しては
過剰なほど心配性の鉄朗に
苦笑いを零しながらも
意識はその後ろで
同じく鉄朗に苦笑いを零してる
及川さんに集中してる

なんで居るの？
帰ったはずなのに…。

「姫凪？
人混みで酔ったのか？」

黙る私の顔を心配そうに
覗き込んでくる鉄朗に

『全然！鉄朗の作ってくれた
ご飯も食べたし平気！
えっと…』

笑顔を返すけど
言葉は上手く出て来ない

だって、言えないじゃない？
及川さんの事ばかり
気になってしまってる、なんて

どうしよう。
このまま黙ってたら
鉄朗に変に思われる…！

「姫凪ちゃんは
及川さんが居て
びっくりしてるんだよねー？」

ちょ、ちょっと！
私が言い難くて黙ってた事を
そんなアッサリ言わないで！