白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
「いただきまーす」
リビングに響く鉄朗の声に
『あ、はい、どうぞ』
ニコリと笑って返す
いつも通りの朝。
一つ違うのは
テーブルを囲む影が
「あ、美味い。
姫凪ちゃんって
料理上手いんだね」
もうひとつあるって事。
『いえ、別に。
あの、おかわりありますよ?
作り過ぎちゃって…』
「そう?じゃあ味噌汁もう一杯飲みたいな
あ、クロちゃん玉子焼き食べないの?
及川さんにちょうだい?」
「はァ!?嫌ですぅ!
俺は好物は残しとく派なんだよ!」
「えー…ケチケチしないでよ
及川さん昨日あんまり食べてなくて
お腹空いてるんだよねー」
お皿の上の玉子焼きを
鉄朗と取り合おうとしてるのは
『及川さん、私のどうぞ』
及川徹。
「え?いいよ。
キミはもっと食べないと
ただでさえミニマムで
折れそうなんだからさ」
チラリと合う目を
逸らさないだけで一苦労だ。