第25章 トド松とデートのような何か
大人の事情で…じゃなくて、なんだか気が向いたからトド松をデートに誘ってみたけど、行きたいところなんてないなぁ…というわけで、彼に聞いてみようかしら。
私は、ウキウキしながら隣を歩いている彼に尋ねる。
「トド松、どこか行きたいところってある?」
「え!?そ、それ、普通僕の台詞じゃない?特に何もないのに誘ったの?」
「うーん…私、そもそもデートとかそういうのに疎いのよね。彼氏もいたことないし。だから誘っておいてなんだけど、よく分からないわ」
ってあれ…なんかトド松、瞳を輝かせてる。なぜに?
「ちゃん…!それってつまり、僕にエスコートしてもらいたいってことだよね!」「は」
彼は私の手を取り、ぎゅうっと握り締める。ただでさえ澄んだ瞳をキラッキラさせ、まっすぐ私を見つめてきた。
あー…なんか別方向に勘違いされちゃったかも。弁解するのも面倒だから、ここは適当に合わせておこうかな。
「ま、まぁ、そうね。頼んでもいいかしら?」
「もちろん!任せて、僕デートは得意だから!」
………ん?
「デートは得意…?」
私が眉を潜めると、彼は「しまった!」というような顔をして飛び退く。
そして慌てながらも笑顔を作り、必死に誤魔化し始めた。
「い、いや、違う違う!そうじゃなくて!け、計画を練るのが得意っていうか!兄さんたちと出掛ける時も、予定は僕が考えたりするしね!」
「…ふぅん?」
ちょっと腑に落ちないけど…一応納得しておきましょうか。
「じゃあまず、おすすめの場所に連れてってくれる?」
「う、うん!」
手を繋ぎ、彼の案内に沿って歩き出す。
そういえば、デートって人生初?あ、でも前十四松とお祭り行ったっけ。あれがデートに含まれるかは別として。
最も、デートなんて今さらな気もするんだけどね。私、とことん順番間違ってるもの…そもそも付き合ってるわけじゃないのに。
そういうの、トド松やみんなは気にしないのかな?…気にしてないんだろうなぁ。