第36章 35 Melody.
「姉、どうかな……?!」
(うわぁ……凄い似合ってる)
「うん、かっこいい!」
流石一織くんだなと思った。
サイズもイメージも、全部ぴったりなんだから。
「本当はあっちのくまさん柄を着てもらいたいですが」って小声で言ってるけど、これはこれでしっくりきたのか……陸を見て頷いている。
「姉に言われると嬉しいなぁ……じゃあ買ってくる!」
「ちょっと!着たままレジに行こうとしないでください!」
「あっ……ははっ、そうだった」
「わかったら早く着替えて。誰かさんのせいで時間が押してますから」
「むっ……その言い方ムカつくなぁ……!」
「まあまあ……!ほら陸、着替えておいで」
「……わかった」
(めちゃくちゃ不機嫌……!)
一織くんに向かって「べーっ!」と舌を出した陸は、試着室のドアを少し乱暴に閉めた。
なんだよ一織の奴!オレはただ2人と買い物出来て嬉しかっただけなのに!
ていうかちょっとくらい姉と喋ったっていいだろ?!
なんて……中から愚痴が聞こえる。
「……着替えたよ」
「ちょっとどころか、完全にさんを独占していましたけど」
「なっ……!聞いてたの?!」
「あれだけ声を張ってたら嫌でも聞こえますよ」
「むっ……!」
「ほら、さっさと会計してきて下さい」
「言われなくてもそうするよ!」
「ははは……」
(って口喧嘩しても買うのは一織くんが選んだやつだ……余程気に入ったんだな)