第12章 11 Melody.
「落ち着いた?」
「うん……」
「……そう」
……信じてみよう、受け止めるって言ってくれたこと。
本当は怖くて怖くてたまらないけど……あれだけ取り乱してしまってはもう誤魔化せない。
覚悟を決めよう……。
「天……」
「……何?」
「6年前……私いきなり消えたでしょ……?その訳がこれなの……」
「……どういう事」
「あの日私はちゃんと向かってた……天の家に向かってたっ……でもその途中で……私っ……」
「……何があったの」
「私っ……知らない男に身体をっ……いじられた……っ」
「……!」
「いきなり連れて行かれてキスされてっ……首も舐められたし……手に出されたりしたっ……。そんな事されてっ……あなた達に会いに行けるわけなかった……!!」
〝ああ……キミを見てるだけで勃っちゃったよ……ほら、触ってごらん……〟
〝興奮するよ……〟
幻聴が聞こえてくる。
耳を塞いでも、頭の中で繰り返し響いてくるから辛い。
倒れそう。
「だから私は逃げたのっ……汚れたままの自分じゃ会えなかったからっ……」
「……」
「ごめんなさいっ……2人の事嫌いになったからじゃないのっ……本当はずっと……っ」
「おい天!!探したぞ!!」
「楽……龍……」
「そろそろ移動しないと……!行こう!」
本当はずっと会いたかった……。
そう伝えたかったのに……天は私に背を向ける。
次の仕事を優先するのは当たり前だけど……なんだか寂しくてたまらない。
「天っ……!」
(待って……っ)
「……」
「天……っ」
この時……私はわかってしまった。
置いていかれる側の気持ちを。
天もこんなに苦しかった……?
そう思うと胸が痛くなる。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「ごめんなさいっ……」
折角天が止めてくれた涙が……また頬を濡らしていく……。
◆11 Melody.END◆