第2章 後編
トランクスは、テーブルを挟んでユメの目の前に座る。
「オレの部屋に来るのもすごく久し振りだね」
普段と変わらない笑顔でトランクス。
「う、うんっ。やっぱ変わったね! 前はおもちゃとかいっぱいあったよね!」
「ははっ、そうそう。今は全部ブラの部屋に行ってるよ」
「そうだ! ブラちゃん、前に会ったときはまだ赤ちゃんだったんだ」
「父さんがブラにメロメロでさ。見ててすごい笑えるよ」
「うそ! あのベジータさんが!?」
そんな会話がしばらく続く。
こんなにたくさんトランクスと喋ったのは、本当に久し振りだった。
あの頃に、“仲の良い幼なじみ”だったあの頃に、戻ったみたいだ。
自分のこの気持ちがある限り、もう戻れないとわかっているけれど……。
日も沈んだころには、緊張もほとんどほぐれていた。
――そんなときだった。
トランクスがふと笑顔を消した。
「トランクス?」
気付いてユメは首を傾げる。
「……この間、ユメ好きなヤツが出来たって、言ってたろ?」
ドキっ……!
ユメも表情を強張らせる。
「あれって……本当のこと?」
そう言うトランクスはあのときと同じ、ちょっと怖い顔で……。
ユメはこちらをじっと見つめるその瞳から、目を離せなかった。
誤魔化せない……そう、思った。
「うん……いるよ」
顔が真っ赤になっているのが、自分でわかる。
トランクスはその瞳を大きくした。
「……どんなヤツ? その、イイ奴なのか?」
「……うん。すごく、やさしい人」
……トランクスのことだよ……。
出掛かった言葉を呑み込む。
「そっか……」
トランクスが視線を外して、ジュースの入ったコップに口を付けた。
「トランクスは? ……好きなコいないの?」
勢いで訊く。
今まで、知りたくても、怖くて……ずっと訊けなかったこと。
悟天の場合、知りたくなくても勝手にウワサとして耳に飛び込んでくるけれど、トランクスのそういう話はあまり聞いたことがなかった。
だからこれまで安心していたのだけれど……。
「……いるよ。好きなコ」
ズキン、と胸が痛んだ。