第1章 春
一方後藤の方はというと、
「容疑者はまだ捕まらないのか!!」
苛立ちを隠せず机を叩く、課長の大谷健吾(おおたにけんご)。その声にうんざりとした声で、
「今探している途中なんですよ、大谷さん」
と後藤はいった。
これは、今月中旬に起きた殺人事件。警察は1週間もたったにも関わらず、まだ容疑者も特定出来ていないという状況だった。
「お前らがそんなふうにのんびりとしてるから、俺が無能な上司にネチネチ言われんだろうが!!!!」
その言葉にその場にいた全員の雰囲気が柔らかくなる。笑いを堪えているものまでいた。
「そりゃ、気持ちは分かりますがね、そんな無理なものは・・・・・」
「いいから早くしろ!!どんな手を使っても構わん!!俺が責任を持つ!!!!」
大谷のその一言でその場の人々の目がギラりと光った。勿論後藤も例外ではない。
「・・・・いや、やはり責任は持たないから、バレないようにうまくしろ!!」
大谷がニヤリと笑った。