第37章 真実
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彼女が屋上から姿を消して、その場にいた男たちに静寂が流れた。さっきまで黒尾が彼女の名を叫んでいたけど、今は至って静かだった。
彼女を屋上から落とした張本人は、彼女の落下を確認したようで及川に近づく。
「…これでいいっすか?」
「ん…、ありがと」
彼女の落ちた先を見つめながら及川は影山に答える
その声を聞いた瞬間、大将との交戦で傷を負った黒尾が立ち上がった。
「及川、テメエ…ゼッテー許さねえからな!!」
「許すも何も、彼女はもういないんだから…。さぁ牛島、これでお前の希望はいなくなったよ。どう?お前の大事な人を奪われた気持ちは…」
「・・・。」
黒尾の言葉を軽く返して及川は牛島の前に立つ。及川を目の前にしても何も語らなかった。
「お前には分かんねえだろ?大事な人を失う悲しみが!!」
牛島が反応を見せないから及川は牛島に向かって怒声を浴びせる。でも牛島は下を向いて何も答えない。
及川も、そんな牛島を不審に思い怒鳴るのをやめた
「…お前、今何を考えてるんだ。夜琉が死んで何を思ってる」
「…お前は、なんとも思わないのか?紫乃さんの実の娘である夜琉が死んで…」
「俺は紫乃さんが好きなんだ。だから、紫乃さんを殺したお前を…ッ!!」
「あぁ~、カワイソーな若利君。」
牛島と及川の会話に割って入ってきたのは他でもない天童だ。天童は牛島の肩に手を置いて「ねぇ若利君」と彼に声をかける