第33章 大王様と穢れ
影山・・・さん?
その人の姿は花火の光ではっきりと見えた。
目つきが鋭くて・・・怖かった。
「なんで、お前がここにいるんだよ…こんなとこに…」
「そんなの…、言わなくても分かるでしょ?国見ちゃん」
国見ちゃんと呼んだその声に聞き覚えがあったからあたしの身体は反射的にベンチから立ち上がってしまった。国見さんの見つめる先・・・影山さんのさらに向こうにその姿が見えた
「あっ、夜琉ちゃん久しぶりだね。浴衣、すっごく可愛いよ」
変わらないその人の笑顔
ニッコリとした口元と、何も映していない冷たい目
その目にに魅入られてしまったあたしは思わず国見さんの服の裾を掴んだ。
すると国見さんは裾を掴んだあたしの手を払った。
小さな声で「逃げろ…」と言って
「あれ?国見ちゃんいつの間にそんな優しい子になったの?昔は女の子大嫌いだって言ってたのに…」
「・・・貴方には関係ありません。」
「関係あるよ、その子が必要なんだから。…夜琉ちゃんを渡して」
「…だってさ、夜琉」
国見さんはそう言ってあたしを見る。
あたしは国見さんと及川さんを交互に見る
国見さんをみると・・・国見さんは小さくうなずいて
及川さんをみると・・・ニッコリ笑顔で首をかしげて
そこであたしの心が決まった。
『国見さん…』
「…分かった」
あたしの頭をポンと叩いて国見さんは及川さん達の方に向かって歩き出した。
そして・・・
「行け!!」
国見さんが、今までないくらい大きな声で叫んだ。
あたしは、その声を合図に及川さん達と反対側に走り出す