第31章 黒猫の説教と極悪妖怪
「・・・ッ!!!」
背後に殺気を感じた川西は、瞬時に殺気の正体から距離を取った。殺気の正体は当然奇妙な歌を歌っていた者から発されていた。
「そんなにびっくりしないでヨぉ~。俺別に何もしてないじゃん。」
「・・・。」
「…なんで俺を追ってきたのォ?」
「…若の、牛島さんの命令です。」
最初こそいつものようにヘラヘラとしていた天童だったが、顔色を変えて川西を見た。
川西も少し引き目だが天童をまっすぐ見ていた
「ふぅ~ん…若利君の…ねェ」
「…貴方は、何をしようとしているんですか?」
「ん~?」
川西の問いかけにニコニコしながら川西の周りをゆっくり歩く天童は、少し考えたような態度をしてから答えた。
「俺はさぁ~、若利君が好きなんだよ。」
「えっ…」
「小っちゃいころから一緒にいて…若利君がどんな人生を送ってきたか誰よりも一緒に過ごしてきたから知ってるんだよ。だから分かるんだよ。彼が誰よりも、人の上に立てべき人間だって」
人の上に立つべき・・・
それは、白鳥沢にいる人間ならば皆が分かっていることだ。
でも、今の白鳥沢は・・・
「それならば、尚更あの少女を傷つけてはならないはずです。あの少女がいなければ、牛島さんは白鳥沢とのつながりがないままだ。だからこそ…」
「ねぇ太一ぃ~。」
川西の言葉を天童が遮った。その顔は川西が今まで見たことのないくらい恐ろしい顔をしていた。
「血のつながりって…そんなに大事なの?」