第29章 大事な人
「よし、帰ろ」
一通り話してからあたし達はカフェテリアを出た。
結局あたしは、岩泉さんに会わずにとにかく大人しくしてなさいと怒られて終わった。
でも最後に、あたしは華夜に質問をされた
「あんたさ、及川さんのこと好きなの?」
『はい?!』
「だってそういう感じに聞こえるよ?」
『好きではないよ!?好きなのはくろ…ッ及川さんは…、なんというか…親?的な』
「親か~…」
『何その残念そうな顔』
「いやね、あたしの中では…夜琉にとって及川さんは名付け親でもある唯一無二の存在でそこから彼を救い出し2人は結ばれめでたしめでたしを想像したのに・・・」
『いや、今の妄想正解が名付け親ってとこしかないんだけど…』
「いやいやいや!だって話の流れ的にそうでしょ!?お母さんの大事な人を助けたいってそれ絶対好きってことでしょ?」
病院のエントランスで大声で叫ぶものだからマラリが変な目で見ている。ワイワイ騒ぐから受付のナースさんがシーッ!!と言っている。
『うん…まぁ大事な人ってのは間違ってないけど、それはまぁ…ね親みたいな存在だからってだけで…』
「えぇ~怪しい~www」
華夜がそう言ってあたしの脇腹をつく。またワチャワチャしていると誰かにぶつかった。
『あっ、ごめんなさい!!』
「いえ、こちらこそ」
ぶつかったのは、入院しているであろう女の人。ブラウンの髪にきれいに整った前髪の女の人。その人はあたし達に頭を下げてエントランスの待合室の椅子に座った。誰か待ってるみたい
「綺麗な人だったね…」
『うん…』
女のあたし達でも思うくらいだった。
そう思いながらあたし達は病院を出た。その時誰か男の人とすれ違ったけど、気にはしなかった。