第29章 大事な人
『及川さんは、あたしの名付け親みたいなんだよね』
「えっ!?そうなの?」
『うん、岩泉さんに聞いたんだけどあたしの夜琉って名前は及川さんが付けてくれたんだって。だから、及川さんは言っちゃえばあたしの親みたいな感じなんだよね。』
「うん…」
そう言いながらあたしは服の上から肩を撫でた。黒尾さんには一度言った青城の人達とも円滑な関係を築きたいとか、仲良くしたいとか・・・そんな風に思うけど、それ以上にあたしは・・・
『なによりさ、お母さん…って言っていいか分かんないけどさ、その、紫乃さんが残した大事な人だからさ、及川さんでも。その子供のあたしがさ、なんとかしなきゃって思わない?正直あたしも、紫乃さんに生かされた身だから』
「・・・。」
笑って見せるけど、華夜は笑ってないそれどころかとても大きなため息をつかれた。
「夜琉ってさ、実はバカ?」
『はぁ!?それ黒尾さんにも言われたし!!』
「いや言われるでしょ!?だってなんでそんな風に思えるわけ!?バカでしょ?!」
机をバンッ!!と叩いてあたしに怒鳴るけどすぐに平常心に戻って今度はあたしを撫でた。
「でも、それがきっとあんたの素なんだよね。なんか新しいあんたが見れて嬉しい」
『…そお?』
「うん!!あんたがそんな無頓着でバカでお人好しだったなんて」
『悪かったね!お人よしで!!』
と、彼女を殴るそぶりをするけどすぐ2人で笑いあった。
こういう素で話せるってすごく気が楽だなって、なんでいままで気が付かなかったんだろう