第29章 大事な人
「えっ…!?」
岩泉さんの名前を出した瞬間、ナースさんが困った顔をした。
首をかしげてナースさんを見る。ナースさんはオドオドしながら入院患者を調べ始めた。
「あっ…岩泉しゃ…あ、いや!岩泉さんのお知り合いの方ですか。この方は今集中治療室にて診察を受けていますので面会はお断りさせていただいているので…」
『あっ…そうですか…』
集中治療室って、岩泉さんどれだけ深い傷を・・・
もらった薬の入った紙袋を強く握ってしまいクシャと音を立てて小さくなってしまった。
「あっ!!あぁああ!!!すみませんッ!!わ…私何もできずに!!申し訳ありません!!」
『えっ!?いやいや!!そんな大丈夫ですよ!!ナースさんそんなめり込むくらい頭下げなくても!!』
お互いでアワアワして一頻り騒いでその場は収まった。
ナースさんに頭を下げて病院を出て行こうとした
「…岩泉、集中治療だってな」
『はい…岩泉さん、何があったんでしょうか…』
黒尾さんと話をしていると、遠目に目についた家族があった。
その家族の娘さんらしき子・・・
『あっ…華夜』
立ち止まって見ると、それは昨日ケガさせちゃった華夜。しばらく会わない方がいいかと思ったのに・・・こんなすぐに会っちゃって、しかもご両親も一緒で・・・
あたし、なんて謝れば・・・
「夜琉…」
『・・・。』
あたしは下を向きながら、極力華夜を見ないようにしながら病院を出ようとした。今は彼女と会うことができないと思ったから
「えっ…夜琉?」