第25章 生きてほしい
『黒尾さん…お風呂、いただきました…』
「あぁ…なんか飲むか?」
あたしがダイニングに入ってきたことを確認した黒尾さんは、またキッチンに立った。キッチンにあったケトルにお湯をいれて沸かし始めた。
あたしは、またソファに座って黒尾さんを待つ。足元にゴロゴロとじゃれてくるネコちゃん達を撫でた。そうだ、今日アイに餌あげてない・・・。アイ、寂しがってるかな・・・
「ほれ」
と持ってきてくれたのはあのココア。黒尾さん曰く、ちょっといつもより甘めに淹れてくれたみたいで、あたしはそれを口に入れた。それは甘くてとってもおいしかったからほぉ…と息を吐いた。黒尾さんが飲んでるのは今日はコーヒーだった。黒尾さんはマグカップを持ってあたしの左側に座った。
『・・・。』
「・・・。」
あたしたちの間には、沈黙が流れていた。
何かしゃべろうと思っても、何言っていいか分からないし・・・黒尾さんも何も言ってこない
『…あの』
「…どした?」
『…その…、さっきは…』
「…さっきは悪かった。」
さっきのことを謝ろうとしたら、先に黒尾さんが謝ってくれた。謝りながら、黒尾さんは叩かれたあたしの左頬をそっと撫でた。
『く…黒尾さんは悪くないです!!』
「でも、俺…」
『でもでも!!あたしがあんなことしたから…ッ!!』
あたしの大きな声で猫たちがびっくりしてキャットタワーの上に上っていってしまった。
あたしはまた泣きそうになった。黒尾さんは全然悪くなくてあたしを止めてくれたのにって思って・・・
「…夜琉」
『…はい?』
黒尾さんは、突然立ち上がって畳んであった洗濯物の山からタオルをもってソファから立ち上がって部屋を出ようとした。でも出て行く直前に足を止めてあたしの方を見た
「…俺の部屋で待ってろ。…話したいことがある」